ア◆<harmony/>
葛藤もなく、判断すべき事象の全てが自明の理の流れの中で選択されていく世界において、そも判断と言う概念の欠如は感情の欠如に他ならず、そんな中で育った少女が初めて感情を認識したのは、戦時下における慰安施設に捕われ、精液と愛液と唾液と血液と汗と人の発するあらゆる液体にまみれた中での痛みという感情であった。
その暴力の中で死にかけた少女が救出された世界は、病気と言うもののが根絶され、思いやりという慈愛に満ちた完全なる管理社会だった。
その幸福が約束された完璧な世界で、
少女がとった選択肢は、
自殺という行動だったのである。
強制される慈愛への反抗。
少女は暴力で死に直面し、
また、優しさでも死に向き合うのである。
物語は、
少女の死後十数年が経過したあとの世界。
同時多発的に死を選択する人間が発生したことに端を発して、一緒に死ぬはずだったのに生き残ってしまった友人の視点で語り始められる。
その友人(親友と呼べる存在)が、
少女の死の真相に近づいていく様は、
SFミステリーではあるが、
本作のキモは、直接的暴力も
優しさや思いやりも
強要による力が介在する限り、死への動機となり得るという事ではないだろうか?
本作は、フィクションではあるが、
見た後に、現実に戻って、あぁ面白かったと言えるような作品ではない。
フィクションを体験することによって、
現実世界の心に明らかに傷を残す作品になっていると思う。
ZガンダムやガンダムUCで語られた強化人間に
思わず像を重ねてしまったが、ガンダムシリーズの強化人間は、後にも先にもつまるところ戦いしかなかったように思う。
本作は、極端なまでに、
暴力による理不尽な世界と
慈愛に満ちた完全な幸福管理社会
の中で物語が展開がされる。
それは完全にフィクションであるが、
現実世界との地続き感もあり、
ガンダムシリーズ同様、単にフィクションで終わらせない作品になっていると感じる。
ともあれ、
間違いなくオトナアニメであり、
オトナという自覚を持った人以外見てはいけない作品だと思う。
それほどに、ものすごく重いテーマを描いた作品であるが、シリーズ前作が、男同士が主軸だったのに対し、こちらは女性同士が主軸になってるところが、面白いところか。
主要キャラを演じる
沢城みゆきと榊原良子が己の立場から主張するシーンの台詞回しは、名シーンだと思いました。
本シリーズ3部作は、いずれも命を題材にしており、問題提起作品と言えると思う。
惜しむらくは、本来第二作目だったはずの作品が、製作会社の破産により、延期となってしまい時系列が狂ってしまった事か。。。
| 固定リンク
「20 アニメ・コミック」カテゴリの記事
- ア◆Fate stay night[HF]Ⅲ(2020.08.28)
- ア◆劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020.09.19)
- ア◆3本連続続け見♪(2020.05.15)
- ア◆LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘(2019.06.20)
- ア◆ガールズ&パンツァー最終章 第2話(2019.06.16)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント